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お知らせ 【調査発表】第3回子育て中の親の外出中に関するアンケート調査報告について

公益財団法人児童育成協会(本部:東京都渋谷区 理事長:藤田興彦 以下、当法人)は、大風薫准教授(お茶の水女子大学)と共同研究で、妊娠中もしくは出産後3歳未満の子どもを持つ全国18~49歳の男女1600名(男性600名、女性1000名)を対象に、「子ども連れ外出」のインターネット調査を実施しました。この調査は、過去2回(2004年、2011年)実施しており、今回、3回目となる調査結果を取りまとめましたのでお知らせします。

※本報告書については、当法人Webサイト(https://www.kodomono-shiro.or.jp/jigyo/tyousa)からもご参照いただけます。

 

1.本調査実施の背景
この調査は、2004年から2011年に行われた「身近な子育て応援活動(※1)」推進のための基礎資料として、こども未来財団(2015年解散後、事業の一部を当法人が継承)が、子育て世代の社会に対する要望や、具体的な支援に対する優先事項を明らかにする目的として実施されました。
※1 国民一人ひとりが、日常生活の中で、自分の意思で自発的に行動する「いつでも、どこでも、ひとりでもできる子育て応援」として個々の活動を通じて地域社会全体で子育てを応援する草の根活動

 

2.結果の整理(調査結果サマリーより抜粋)  ※別添調査結果サマリーをご参照ください。

◆女性たちの子育て支援環境・ネットワーク
〇もっとも頼りたい相手は「配偶者・パートナー」。ただし、この9年間で子育て協力が進んでいる様子は見られない
〇実の母親(祖母)も支援の主たる担い手。出産前後および日頃の支援ともに実の親に頼る傾向
◆子ども連れの外出状況
〇近所への徒歩外出が主。公共の交通機関を利用した外出は相対的に頻度が低い
〇外出頻度は2010年よりも減る傾向。IT環境の進展、スマートフォンの普及などが影響している可能性
◆外出意欲と外出先満足度
〇女性は男性よりも積極的な外出意欲が低く、不安を抱えがちである
〇女性は2010年に比べて積極的な外出意欲はやや低下も、外出先満足度はやや上昇
◆外出時の危険・困難経験
〇女性は男性よりも多くの危険・困難経験をしている
〇主な危険・困難経験は子ども連れのスムーズな行動や移動を妨げる物理的な環境(トイレ、階段、公共交通機関の乗降など)
〇対人ストレスも多い(世間の白い目、おせっかい、口出し)
〇ただし、2019年は2010年に比べて改善の兆しがみられる
◆外出時の嬉しかった経験
〇女性は男性よりも多くの嬉しかった経験をしている
〇女性は外出先での実質的な負担を減らす手段的なサポートや子ども連れを受容する態度による情緒的なサポートも嬉しく感じる
〇ただし、2019年と2010年に大きな差異はない
◆外出時の困りごと
〇2019年は2010年よりも改善している状況
〇物理的な環境改善、周囲を気にせず子どもと過ごせる場所、迷惑がられる機会の低下
◆周囲や社会への期待
〇2019年は2010年よりも外出しやすい環境を感じている傾向
〇安全確保、子ども連れを受容する態度、子どもが自由にふるまえる空間、物理的環境のストレス減少
〇ただし、男性との共同養育、こども連れへの見守り期待は道半ば

 

3.結論(研究者まとめ)
街中のバリアフリー化や駅を中心とした再開発、タバコに対する社会的な圧力などを通じて、子ども連れの外出において行動を制約する物理的要因が取り除かれつつあること、また、「子どもを社会で育てていこう」という意識が建前の上では浸透しつつあることから、表立って子ども連れを攻撃する人々も減ってきているといったことが背景となり、女性(母親)の外出先満足度は高まる傾向が見られる。「マタニティマーク」の認知・理解が進み、当事者がその効果を体感できていることも満足度の上昇に貢献していると考えられる。
女性たちにとっては、自分たちが社会の中で受け入れられているという実感を持つことが、外出時のネガティブな意識を払しょくすることに効果がある。その際に重要なのは、妊婦や子ども連れの外出の困難に対する理解と、過度にならない程度のちょっとした思いやりや気遣いを女性たちに示すことである。女性たちが周囲や社会に期待することを見ても、現在の状況は、子育てにやさしい社会といえるのかどうか、当事者が確信を持てない状況にあるようである。子育てをする当事者に社会への信頼を持ってもらうためにも、さまざまな機会を通じて子育てを応援するメッセージを継続的に発信することが重要である。

 

4.研究者
大風 薫   お茶の水女子大学 学生・キャリア支援センター准教授
田 嫄    明治大学博士研究員
佐野 潤子  お茶の水女子大学 グローバルリーダーシップ研究所講師

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